さつまいもの美味しい食べ方

焼き芋への道3

さつまいもの美味しい食べ方

さつまいもはデンプン質です。ところが皆さんの口に入る間に、調理の仕方次第で麦芽糖に変化していきます。そのメカニズムを披露します。


壺焼き芋の旨さの秘訣

色々ないきさつで焼き芋を作る事になりました。知れば知るほど薩摩芋の特製を生かし、甘さを追求してみたくなりました。
甘さの秘訣「芋の出来、保存熟成、加熱」にあることが分かりました。


さつまいもはホクホク粉質系とネットリ粘質系

 近年の焼き芋ブームは品種改良による「糖質が高い薩摩芋の開発」によるものです。以前は「紅あずま」に代表される、デンプン質が多い粉質のホクホク芋が主流でしたが、平成20年頃に開発された「紅はるか」「安納芋」などの粘質ネットリ芋が人気を呼びます。
 薩摩芋は比較的簡単に作れますが、土や気候を選びます。黒土の肥沃な土質ではおいしい薩摩芋は育ちづらく、痩せた水はけのよい土が適して、日差しが強い場所が良いようです。私がお借りした畑はたまたまその条件を満たしていて、それなりにおいしく「紅はるか」を栽培できています。近所では栄養がありすぎて薩摩芋が育たない場所もあるようです。
 


デンプンが糖に変化する「熟成」に2ヶ月間以上

 千葉県の実験によると、薩摩芋は保存によりデンプンが糖化します。大きさにもよりますが、完熟に要する期間は2~3ヶ月。
 ホクホクのデンプン質が好きな方は収穫したてが良いようです。甘みが好きな方は年明けや春先の薩摩芋がお勧めです。10°以下になると保存が出来なくなるため、農家は早めに売りたいところです。
 八雲神社所有の洞窟は年間を通して12°程度です。貯蔵に適しています。建物や空調設備も不要です。
 現在は壺焼き芋用の薩摩芋以外にも年明けにつくる乾燥芋や販売用に貯蔵をされている農家さんもいらっしゃいます。
 兎にも角にも、焼き芋は調味料を一切使わないので素材の味で差が出ます。焼き芋に適したお芋を選ぶ必要があります。

甘さと旨さを引き出す加熱法

 薩摩芋のデンプンは85度程度の温度で加熱されることで麦芽糖に変化します。均一に火が通るように時々芋を転がしながら加熱に要する時間は90分程度。お芋の大きさや火加減でそれ以上かかることもあります。
 ご家庭でも時間をかけて加熱することで甘みを引き出すことは可能です。
 水分も蒸発し重量は三割程度軽くなります。そのため甘みと風味が凝縮されます。この調理方法はご家庭ではなかなか出来ない方法で、「壺焼きならでは」の調理方法です。
 上手に焼けると芋の果肉が柔らかくなり、芋の中に蒸気が満たされて、皮が膨れ、さわるとフワフワの手触りになります。冷やすことで蒸気がなくなりますが、その代わり果肉と皮が分離します。さわったときに柔らかいのは味が凝縮している証拠です。
 サツマイモの甘みを引き出す壺焼き器
 八雲神社で考案した特製釜で調理した焼き芋です。昔からある「壺焼き芋」の原理を利用して、汎用性を向上させた焼き芋器です。
 壺焼き芋はジックリと加熱することで「果肉」も「皮」もおいしく頂くことが出来ます。